保育士処遇改善交付金のニュースを見て

  • 2019年12月30日
  • 2020年1月13日
  • 雑記

実際の情報元を調べてみると、報道とだいぶ印象が違うという話です。

NHKが発信元のニュース。

こういった調査をどこがやっているのだろうと思ったら「会計検査院」というところがあるらしい。

会計検査院は、国の収入支出の決算、政府関係機関・独立行政法人等の会計、国が補助金等の財政援助を与えているものの会計などの検査を行う憲法上の独立した機関です。(出典:会計検査院HP トップページより)

調査元を調べてみると、237ページにも及ぶ調査報告書のpdfファイルが出てくる。

流石に全部は読めないが、今回の記事にもなっている”失念”というワードを検索してみるとPDFの73ページ目(報告書P68)に1箇所だけみつかり、ニュースの元情報であることがわかる。(概要という1ページだけのpdfファイルもあるが、そこには登場しない)

これだけ長い報告書があっても、注目されるのは237ページ中の一部のみ。NHKのサイトで会計検査院と調べてみたが、同じ報告書をもとにした別の記事は見当たらなかった。

悪いことではない。

ただ、報道とはこういったものだというのがよくわかる。NHKに少しでも偏見があれば、少しでも恣意的な気持ちがあれば、書かれる内容は異なってくるだろう。

記事の中身を見てみると、

 全国の保育施設のうち6000か所余りを抽出して調べたところ、延べ660の施設で合わせて7億1900万円余りが実際は賃金の上乗せに使われていないか、または使われていない可能性の高いことが分かったということです。

その理由について多くの保育施設は「失念していた」と回答したということです。(前記NHK記事より)

何も考えずに読むと、6000施設あってそのうちの660施設、つまり11%でこういった対応があったふうに見えるが、”延べ”というワードが重要で、実際はそこまで高くないと思われる。

処遇改善加算にはⅠとⅡがあるらしく、それぞれ対応できていなかった施設を集計するとⅠが357施設、Ⅱが303施設、合計で660施設である。重複している施設については記載が見当たらなかった。

さらに、この処遇改善加算状況の調査は、前年加算できなかった分を翌年へ繰越しなければならないという決まりがしっかりと機能しているかの調査である。満額上乗せを忘れていたという話ではない*1

前記のとおり、残額が生じた場合は、翌年度においてその全額を職員の賃金改善に充てることとされている。そこで、残額が生ずるなどしていた保育所等の翌年度における職員の賃金改善の実施状況について確認したところ、(以下略。 出典:前記報告書P67)

また「失念していた」という理由が多かったとの記載があるが、一番多かった理由だけであって、実際は300施設前後のうち50〜140施設程度である(年度と加算の区分によって異なる)

 残額の全部又は一部が翌年度においても職員の賃金改善に充てられていなかった理由をみると、残額を支払うことを失念していたとした保育所等が、処遇改善等加算Ⅰ(賃金改善要件分)については、28年度で 52施設、29年度で84施設、処遇改善等加算Ⅱについては、29年度で138施設 等となっていた。 (出典:前記報告書P68)

すべてまとめると、翌年の繰越を失念していたのは、6000施設あるうちの50〜140施設/年となる。

しっかり対応できていない施設があることには変わりないが、だいぶ印象は変わってくる。

制度が複雑で理解されていない可能性もあるし、ブクマにある保育園への批判も流石に過剰ではと感じる。会計検査院も指導や周知の必要性を訴えている。(pdfの74ページ、報告書の69ページ目)

調査の仕方*2、報告の仕方、報道の仕方、受け取り方などなど、様々な視点で見えてくるものが変わってくるし、こういった報道を一つ紐解いて見るだけでも勉強になることは多いですね。

また、時間のあるときにやってみようかと。

*1:もちろん満額上乗せを失念していた施設もあるかもしれないが、あるのかどうかなど、そこまで読み込めていない。

*2:調査手法、結果が正しい前提で話を進めているが、厳密にはそれもわからない